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大阪高等裁判所 平成4年(ネ)595号 判決 1993年6月17日

兵庫県尼崎市潮江二丁目二番四六号

控訴人(原審本訴原告・反訴被告)

株式会社 西友

右代表者代表取締役

更家輝男

右訴訟代理人弁護士

松田繁三

辛島宏

右輔佐人弁理士

岡田全啓

大阪市阿倍野区松崎町二丁目六番四三号

被控訴人(原審本訴被告・反訴原告)

セキセイ株式会社

右代表者代表取締役

西川雅夫

右訴訟代理人弁護士

阪口徳雄

小田耕平

右輔佐人弁理士

坂上好博

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決中控訴人の本訴請求を棄却した部分(主文第一項)を取り消す。

2  被控訴人は、本判決添付の別紙「イ号物件目録」記載の台紙帳を製造、販売してはならない。

3  被控訴人は控訴人に対し、四二五〇万円及びこれに対する平成元年一二月二六日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、第一、第二審を通じ被控訴人の負担とする。

5  第2、第3項につき仮執行の宣言

二  被控訴人

主文同旨

第二  事案の概要

本件事案の概要は、四項(七頁一行目から六行目まで)を次のとおり訂正するほか、原判決事実及び理由欄第二記載のとおりであるから、これを引用する。

「四 被控訴人の行為と控訴人との競業

被控訴人は、原判決添付の「イ号図面」記載の台紙帳(以下「イ号物件」という。)を業として製造、販売している(争いがない。但し、101、102は表紙部、103は背表紙部、104は台紙、130は熱溶融性の接着性を有する部材、105は熱溶融性の接着剤)。

控訴人は、イ号物件は、本判決添付の別紙「イ号物件目録」記載のとおり特定すべきであると主張するが、原判決添付の別紙「イ号物件目録」記載のとおり特定するのが相当と認められる(原判決添付の別紙「イ号物件目録」と控訴人がイ号物件の特定として当審において主張する本判決添付の別紙「イ号物件目録」との主要な相違は、熱溶融性接着剤105の、各台紙104の綴じ付け側の端縁からの入り込みの程度につき、前者が「若干」としているのに対し、後者が「〇・三ないし〇・六ミリメートル程度」と具体的数値をもっで規定している点であるが、検甲第一ないし第四号証、第七ないし第一四号証、検乙第五ないし第一〇号証、弁論の全趣旨によれば、被控訴人の製品においては右入り込みの程度に多少のばらつきがあり、〇・三ないし〇・六ミリメートルの範囲に収まらないものもあることが認められるところ、控訴人の主張は右範囲を逸脱するものはイ号物件でないとする趣旨ではないと解されるから、原判決添付の別紙「イ号物件目録」の記載のように特定せざるをえない。)。

控訴人は、イ号物件と同種の台紙帳を製造販売しており、市場において競合している(争いがない。)。」

第三  主な争点に関する当事者の主張

主な争点に関する当事者の主張は、次の一ないし五のとおり当審における補充的主張を付加するほか、原判決事実及び理由欄第三記載のとおりであるから、これを引用する。

一  最高裁平成三年三月八日判決・民集四五巻三号一二三頁について

(控訴人)

右判例は、「特許出願に係る発明の……要旨認定は、特段の事情のない限り、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない。」としている。

したがって、本件のように明細書の実用新案登録請求の範囲の記載でその技術的意義が明らかな場合は、考案の詳細な説明の記載や出願経過等を参酌するのは相当でなく、これらによって技術的範囲を限定解釈することは許されないというべきであるし、仮にこれらを参酌するとしても必要以上に限定的に解釈することはできないというべきである。

(被控訴人)

右判例は、侵害訴訟ではなく、審決取消訴訟についてのものであり、侵害訴訟においては右のような考え方はほとんど許容されていない。

実用新案登録請求の範囲の記載は、考案の詳細な説明(図面を含む。)の記載と矛盾してはならず、それによって基礎づけられていなければならないから、考案の詳細な説明の記載は常に参照(参酌)しなければならないのは当然である。侵害訴訟においては、この考え方は実務的に定着している。

また、発明の保護はあくまで出願人が認識した範囲に限られるべきであり、認識以上の権利を与える必要がないのは特許法、実用新案法の根本である。したがって、出願人が技術的範囲に属しないと考えて意識的に限定している場合に、それ以上の権利を与える必要がないのは当然である。とりわけ、出願過程において、当初の出願が拒絶査定を受けた結果、登録を受けるためにその考案技術を意識的に除外限定して権利を取得しながら、その権利を取得するやその意識的除外を考慮すべきでないとする考え方は、禁反言の法理に反するものであるとするのが定着した実務である。

二  実用新案登録請求の範囲の「介在すると共に……結合している熱溶融性の接着剤」という表現について

(控訴人)

原判決は、標記表現は同一の熱溶融性の接着剤が「介在」する役割と「結合」する役割を共通に(同時に)果たしているという意味であるとするが、明細書には同一であるとは記載されておらず、要するに熱溶融性の接着剤が、仮に二種以上のものであればそれらが一体化して各台紙間に「介在」しかつ背表紙内側に「結合」する構成である以上、文言的に右請求の範囲に含まれるのであって、右のような限定は理由がない。

この点に関して、原判決は、考案の詳細な説明中の<1>公報2欄17~19行目、<2>同3欄16~24行目、<3>同5欄2~11行目、<4>同3頁以下の図面を指摘するが、右<1>の点については実用新案登録請求の範囲と同じことがいえるし、<2>の点はあくまで一実施例であって、これのみに限定して技術的範囲を定めてはならず、<3>の点は、第二の実施例に関するものであって、逆にこの実施例こそイ号物件のごとき形態の構成も示唆しているといえるのである。

<3>の点について詳述すると、第二の実施例は、背表紙との結合をより強度にするために、熱溶融性接着剤を二度に分けて塗るというもので、二度塗りの工程により二種の熱溶融性接着剤を一体化して結合と介在の作用を果たさせるというものである。これは、加熱すると軟化溶融し冷却すると固化し、この工程を何度も繰り返すことができるという熱溶融性接着剤の本質的な性質を利用したものである。そして、公報5欄8行目で「同じ材質」と記載したのは、熱溶融性接着剤という趣旨であり、厳密な意味での「同一」種類とまで限定したものではない。一方、イ号物件は、熱溶融性接着剤といわれる接着剤の中から溶融粘度特性を多少違えた熱溶融性接着剤を選択し、130部材(台紙に予め塗布)と105部材(製本時に台紙群の端面側に塗布)を二度塗りし、台紙間空隙の端面側を閉塞した状態で、台紙間に介在させかつ背表紙に結合させているのであって、これは、まさに本件考案の第二の実施例の二度塗りと酷似した工程を経て作製されたものであり、特に第二の実施例における「台紙群の両端の二枚の台紙への接着剤の付着」と「二種の接着剤の一体化」とは、全く同じ作用、効果をもつものである。

なお、原判決は、前記<4>に関する説示において、すべて隣接の台紙相互を接着している熱溶融性の接着剤と、台紙を背表紙に接着している熱溶融性の接着剤とが不可分一体となっていると指摘するが、第二の実施例では、二度目に塗布された接着剤15は台紙間に入り込んでおらず、したがって台紙とは直接接触結合しておらず、接着剤5と結合しているのみであるから、右指摘は誤りである。これに対し、イ号物件は、105部材自身が一定程度台紙間に入り込んで台紙と直接結合し、かつ130部材とも互いに溶け合っているのであるから、イ号物件の方が、本件考案の第二の実施例よりも不可分一体性が強いことに注目すべきである。

三  先行の公知技術について

(控訴人)

原判決は、乙第一〇号証、第一八号証については熱溶融性接着剤が紙葉間に浸入した図が示されているから、本件考案はこの公知技術より一歩進んだものであり、接着剤がこれらのものより深く台紙間に入り込んでいる必要があるとし、乙第一七号証については、これが厚紙の機能を代替するためのものであり、イ号物件の130部材も同様であるとしているが、このような解釈は誤りである。

1 乙第一〇号証、第一八号証について

乙第一〇号証のものは、無線綴じの製造装置に関するものであって、多数紙葉を背部の接着剤で固定することに主眼があり、要は接着固定できればよいのであって、本件考案のように紙葉間に一定の間隔を維持する考えは全くないから、事実上接着剤が若干紙葉間に入ることがあっても、それを目的としたものではなく、紙葉間に一定の間隔ができることはむしろマイナスであって、その接着剤の浸入の量を制御することはできていない。その第6図は、紙葉間に接着剤が入っているように見えるが、詳細な説明はなく、その点何がしかの意味があるのかについて明確な考え方も不明であるから、これを限定解釈の根拠とするのはあまりに安易にすぎる。

乙第一八号証のものも、技術的には乙第一〇号証のものとほぼ同内容で、紙葉群を重ね合わせカバーの背部を加熱して接着剤を溶融させ、紙葉群と背部とを接着して製本する無線綴じの簡易製本技術に関するものであるが、「熱溶融性接着剤が緩く集束されたシートと組合される」と記載されていることから明らかなように、紙葉間を集束するものであり、その間に一定の間隔を維持するという考えは全くない。その第7図、第8図には接着剤によって一定の間隔を維持しているかの如く示されているが、これは作図上やむをえずかかる表現になったもので、むしろ紙葉間に間隙ができることはマイナスであり、詳細な説明にも一定の間隔を維持することに関する考え方は開示されていない。

一方、本件考案は、乙第一〇号証のような無線綴じ装置の公知技術を前提にして、要するに熱溶融性接着剤でもって、背表紙への結合作用とともに台紙間に厚紙の厚さ相当の間隔を保つ作用を持たせることを目的としたものであり、この点において従来の紙葉間がほぼ密着している無線綴じ技術に対して進歩性が認められて登録がなされたのである。したがって、本件考案の主眼は「厚紙の厚さ相当の間隔を持たせる」点にあるのであって、接着剤が台紙間に入り込む深さの点において従来技術に何ものかを付け加えるものでは全くない。

しかるに、原判決は、この点を理解せず、台紙間に入り込む熱溶融性接着剤の「深さ」の点に本件考案の進歩性があるものと誤解して、乙第一〇号証、第一八号証の、若干紙葉間に接着剤が入っている図面を根拠として、これよりも深く入り込む必要があると解釈するものであり、不当である。しかも、前記のように乙第一〇号証、第一八号証においても、紙葉間への接着剤の入り込みをどの程度のところまで考案や発明の課題としているかすら曖昧不明なのであり、ましてや乙第一〇号証第6図や第一八号証第8図には接着剤が紙葉間に浸透する程度の数量的な説明は全くないのに、特段の分析もせずに、このような図面と比較して浸透の深さの程度を漫然と議論するのは、およそ不正確で、判断の名に値しない。

2 乙第一七号証について

本件考案は、厚み方向ではなく、背表紙の内側面側から各台紙を接着する無線綴じの方法を採用することにより、綴じ金具等を必要とせず、製本作業の手間が大幅に簡略化されるという作用効果を奏する(イ号物件は130部材に熱溶融性接着剤を使用することによって右の効果を得ている。)のに対し、乙第一七号証のものは、従来の厚紙等によるスペーサを使った平綴じによる製本技術(本件考案の第4、第5図)の厚紙部分を合成樹脂等の化合物に置き換えただけの、技術的には従来品と何ら変わりのないものであって、合成樹脂等のスペーサでは、加熱しても溶融して接着力を有する状態には至らないので、無線綴じに利用することは不可能である。

3 被控訴人は、乙第四号証には台紙間に介在片相当の間隔があるから、本件考案の主眼が「厚紙の厚さ相当の間隔をもたせる」点にあるとするなら本件考案の主眼とするところはすべて乙第四号証に開示されていたことになる旨主張するが、乙第四号証では、背表紙を接着している接着剤2は熱溶融性接着剤ではなく、それ自体にスペーサとしての機能はなく、間隔を保持するためには別途連結片が必須であり、連結片がないと間隔を保持できない。このような特殊な製本方法は一般的には無線綴じとはいわない。これに対して、本件考案は、まさに熱溶融性接着剤それ自体に、背表紙への結合作用だけでなく、スペーサとしての機能すなわち台紙間に厚紙の厚さ相当の間隔を保つ作用を持たせた点において特徴があり、この点で従来技術とは解決手段を異にし、これらをはるかに凌駕したものである。要するに、台紙帳である限り、台紙間に一定の間隔を開けることを意図することは当然であるが、どのような方法で間隔を保持するかが問題であり、その手段方法いかんに技術的な意義があるのである。

また、被控訴人は、控訴人の主張は台紙の接着強度を無視するものである旨主張するが、控訴人は、台紙の接着強度を無視した主張をしているのではなく、本件実用新案登録請求の範囲では接着強度の面の限定や接着剤が入り込む深さについての限定をしていないとの主張をしているのである。接着強度を確保するためには種々の方法が選択でき、熱溶融性接着剤が台紙間に「深さ」の点でどの程度入り込む必要があるかについては、台紙の性質(材質、腰の強さ、厚み等)との関係で一律に規定することはできないものである。例えば、腰が弱く軽い材質の台紙の場合は、熱溶融性接着剤が入り込まなくても十分に結合作用及びスペーサとしての機能を維持することができる(台紙が少々厚くても、その厚さ(〇・一五mmぐらい)の三倍程度入り込んでいれば十分なのである。)。

(被控訴人)

1 乙第四号証のアルバム帳は、「台紙1の相互間に台紙1の背面から若干内方にずらして介在片を介在して多数の台紙1の背面にのみ液状の自己接着剤2をロールなどにより塗布し、また背固用紙布3の片面にも同様にして自己接着剤2を塗布し、該接着剤2を乾燥せしめて後、堆積された台紙1の背面に背固用紙布3を接着して背固めした後、前記介在片を取り除き、この状態で台紙1を展開し、背固め側縁部に沿い、且隣接する台紙1の対向面にまたがって帯状の連結片4を貼着して、台紙1を相互に連結し、図示しないが更に表紙を取付けて製本する」というものであり、この「介在片」はまさに本件考案の「厚紙」であり、このアルバムには完成状態において「台紙相互間に介在片(厚紙)相当の間隔」がある。

また、介在片相当の間隔をあけて背固用紙布3で背面を背固めして連結片4によって補強した段階の半完成アルバムは、本件考案の第二実施例の半完成台紙帳(第10図)と同等のものとなり、台紙相互間が熱溶融性接着剤で連結されているか、他の手段で連結されているかの差異があるだけである。

控訴人主張のように本件考案の主眼が「厚紙の厚さ相当の間隔を持たせる」点にあって、接着剤が台紙間に入り込む深さの点において従来技術に何ものかを付け加えるものでは全くないとするならば、本件考案の主眼とする技術的思想は、すべて乙第四号証(第一回拒絶理由通知の第一引用例)に開示されていたことになる。

なお、乙第一七号証の公知の台紙を乙第一〇号証の公知技術の方法で製本した台紙帳も、台紙相互間にはスペーサに相当する間隔があり、イ号物件はこれに該当する。

2 乙第四号証では、台紙間に接着剤が入り込まない態様では台紙の接着強度が不足することから、連結片4を付加する構成を採用して台紙の十分な接着強度を確保している。台紙の接着強度を確保しようとするのは当業者の技術的常識に合致したものであるが、控訴人は、本件考案では台紙間に接着剤が入り込む必要がない、台紙間に介在する接着剤が台紙相互を接着する必要がないなどと主張し、右接着強度、つまり台紙を背表紙に接着する強度を全く無視している。

しかし、明細書全体の記載に照らせば、本件考案の特徴的構成は「台紙と背表紙との接着強度の確保」と「台紙相互の間隔の確保」とを単純なかつ単一の構成によって解決したことにあるといえ、このように本件考案の特徴を把握することによって、明細書各部の記載や出願経過における主張が無理なく理解でき、また、乙第四号証や乙第一七号証の技術が本件考案の出願前に公知であったとしても、右の点に新規性が容認できるのである。

四  出願から登録査定に至る経過について

(控訴人)

出願から登録査定に至る経過は、明細書の記載が明確である以上問題とすべきではないが、仮に問題にするとしても原判決には誤りがある。

すなわち、原判決は、出願人が第一回拒絶理由通知に対して提出した意見書(乙八)及び第二回拒絶理由通知に対して提出した意見書(乙一二)における記載を取り上げて限定解釈の根拠としているが、右各意見書の記載は、要するに、本件考案は、熱溶融性接着剤でもって、背表紙への結合作用とともに、台紙間に「厚紙の厚さ相当の間隔を保つ作用を持たせた」点が新規な点であることを明らかにするために種々の説明を加えたものであって、引用例に対するコメントもこの観点からなされたものである。前者における引用例3(乙六)についての「単に重ねた帳票間に浸透したものであって事実上間隙が存在していない。」とのコメントも、浸透の程度や深さを問題としたものではなく、引用例3では所定間隔を維持するという発想がなく、現に間隔の維持がなされていない事実を指摘したにすぎないことは文脈上明らかである。後者における引用例(乙一〇)についてのコメント(3頁13~18行目)も、各紙葉間に所定間隔が存在するかどうかを問題とした文脈の中で述べられたことで、要するに引用例では各紙葉の厚さに相当するほどの間隙が存在せず、第6図は所定間隔が存在するかのようにも見えるが、実は接着剤が適度に浸透したことを説明するために図面作製上の制約から誇張して描かれているものだということを述べたにすぎず、本件考案における接着剤の浸透の程度や深さを問題にしたものではない。接着剤の浸透の深さは、台紙の接着の強度を左右する問題であって、厚紙の厚さ相当の間隔を持たせるという本件考案の技術とは直接関係がないのである。

(被控訴人)

控訴人は、本件考案は熱溶融性接着剤でもって「台紙間に厚紙の厚さ相当の間隔を保つ作用を持たせた」点に進歩性が認められた旨主張するが、これは、出願過程における第一回から第三回の補正による限定事項が全く無意味な限定であったというに等しく、禁反言の原則を無視したものであって許されない。

控訴人は、「接着剤の浸透の深さは、台紙の接着の強度を左右する問題であって、厚紙の厚さ相当の間隔を持たせるという本件考案の技術とは直接関係がない」と主張するが、これはまさにナンセンスであり、反対解釈をすれば、「接着強度の確保を前提とする限り、接着剤の浸透の度合いが重要である」ことを認めている主張であるといえる。本件考案の台紙帳の場合、台紙と背表紙との間には一定の接着強度が必要であるから、接着剤の台紙間への浸透の度合いを無視できるとする控訴人の主張には大きな無理がある

五  本件考案の構成要件(4)とイ号物件について

(控訴人)

1 イ号物件における105部材の台紙間への入り込みの程度について

原判決は、イ号物件における105部材の台紙間への入り込みの程度は、乙第一〇号証や乙第一八号証のものの程度を超えるものではないとするが、前記のとおり本件考案は乙第一〇号証のものに対して接着剤の入り込みの「深さ」の点で進歩性が認められたのではなく、「厚紙の厚さ相当の間隔を持たせた」点に進歩性が認められたのであるから、イ号物件において厚紙の厚さ相当の間隔を持たせる技術的意義があるかどうかを検証せずに接着剤の入り込みの深さを問題にするのは失当である。

また、原判決は、「従来台紙等を背表紙に強固に接着結合するために浸入させていた程度」と判示し、従来から一般的に無線綴じされた台紙帳が存在したかのように述べるが、無線綴じによる台紙帳は本件考案以前には存在しなかったのである。すなわち、単なる紙葉(シート、紙)を重層して無線綴じしたものとしては、電話帳、本、ノート等数多くあるが、これらの製本においても紙葉間に一定の間隔を隔てて綴じたものはない。一方、写真や葉書など一定の厚みを有するものを収納することを目的とする台紙帳においては、台紙相互間に写真や葉書などの厚さを許容するための一定の間隔を持たせる必要があるが、重層された単なる紙葉において行われていた無線綴じは、右間隔を隔てることができなかったから、これを台紙帳に採用することはできず、綴代部に厚紙と台紙とを交互に配置して綴代部を綴じ金具などで厚み方向に綴じるのが一般的であった(平綴じ)。そこで、本件考案が初めて、熱溶融性接着剤を各台紙の相互間に介在させ、台紙の綴じ付け側縁部の端面を背表紙の内側に結合させる技術を開示し、まさに台紙帳に無線綴じの手法を採用するための技術を提供したのである。本件考案とイ号物件との関わりにおいて重要な点は、<1>台紙相互間に介在するものが熱溶融性接着剤であること、<2>製本方式が無線綴じで、台紙端面が背表紙内側に結合された形状であることの二点である。

念のため、乙第一八号証の第8図とイ号物件の105部材の入り込みの程度を計算分析すれば、イ号物件の105部材の方が乙第一八号証の第8図よりもはるかに深く浸透しているのである。

2 イ号物件における130部材の意義・機能について

原判決は、乙第一七号証の先行技術に鑑みると、イ号物件における130部材は従来スペーサとして使用されていた厚紙等の機能を代替するために使用されているものであって、台紙相互間及び台紙と背表紙を直接接着するために使用されているものではないから、本件実用新案登録請求の範囲にいう「熱溶融性の接着剤」と認めることはできないとするが、乙第一七号証のものは厚紙等の従来のスペーサそのものの代替技術であるのに対し、イ号物件における130部材は、105部材を塗布する際にその加熱により再溶融し、105部材と溶け合って結合して一体化し、かつ隣接する台紙の下部にも若干接着し、両者一体として介在結合作用を果たしており、そのため無線綴じとしてそのまま製本作業を完了することが可能となるのであって、このような熱溶融性接着剤でなければ果たせない機能を発揮しているのであるから、到底従来の厚紙や接着作用のない合成樹脂製のスペーサと同じ機能の代替とはいえない。スペーサとしての厚紙や乙第一七号証のような発泡性のインク等は、熱溶融性ではなく、熱溶融性接着剤により接着しようとしても溶融しないので、無縁綴じの製本に使用することはできない。

仮にイ号物件の130部材が厚紙や乙第一七号証のような発泡性のインク等であったならば、控訴人は問題としないのであって、それが熱溶融性接着剤を使用することによって綴じ金具等を必要とせず製本作業の手間が大幅に簡略化されるという本件考案の作用効果を得ているからこそ、問題にしているのである。

3 130部材と105部材について

原判決は、イ号物件における130部材は105部材とその材質において実質的に同一のものと認めることはできないと判示するが、イ号物件の130部材はヒロダイン4907を、105部材はヒロダイン3728をそれぞれ使用しているところ、甲第一七号証(調査嘱託の結果)によれば、いずれも、その主成分はエチレン酢酸ビニル共重合化合物(略称EVA)、軟化点は一〇五度で同一であるから、このようにその主成分と軟化点が全く同じで、溶融粘度特性が多少違う程度のものを、材質が違うと判断するのは誤りである。本件考案との関係では、加熱すると軟化溶融して接着力を有し冷却すると固化して結合するという性質を利用して無線綴じによる介在・結合作用を果たさせている点が重要であり、その点で「熱溶融性接着剤」を必須の構成要件とする意味があるのであるから、それ以上に細かい点を種々あげて異同を論ずる意味はなく、厳密な成分に若干の違いがあっても、本件考案の技術的範囲の解釈においては実質的に同一と解すべきである。

また、原判決は、イ号物件の130部材と105部材の主たる用途が異なることを材質が実質的に同一でないことの根拠とするが、甲第一七号証における「製本無線綴用」、「紙、アルミ箔コーティング」との記載は、単にメーカーが考えている一応の用途にすぎず、これによって材質が同一であるかどうかを判断することは誤りである。現実に特性と使用条件さえ合えば、全く問題なく、どの用途のものでも無線綴じ製本用に使用することができるのである(現に、主たる用途は合成フィルムのヒートシール剤とされているヒロダイン4906も、検甲第二六号証で示すように、無線綴じ用に使用することが可能なのであり、このように溶融粘度特性がほぼ同じの続き番号のヒロダイン4906が無線綴じに利用できる以上、130部材に使用されているヒロダイン4907も無線綴じに利用できることは疑いがない。)。

4 台紙相互間の接着について

原判決は、イ号物件における130部材は各台紙相互間を接着していないと判示するが、130部材は軟化点を一〇五度とする熱溶融性接着剤から成るので、固化した130部材の下端部に一六〇~一八〇度で溶融した105部材を塗布接着させる際に130部材の下端部から相当程度の部分が再溶融することは明らかであり(この点は被控訴人も認めるところである。)、その結果、130部材の溶融した部分が隣接する台紙と接着するし、せり上がった105部材のせり上がり部分も当然に隣接する台紙と接着するから、イ号物件は、130部材と105部材とが一体となって台紙相互間を接着しているのである。

被控訴人は、130部材に105部材を塗布したときに130部材が再溶融するか否かは簡単に解明できないとするが、被控訴人は、原審における準備書面(七)において控訴人の「イ号物件のスペーサと背表紙内面の熱溶融性接着剤(105)とが接着によって一体化されている」との主張、すなわち、105部材の熱によってこれと接する130部材の下端部分が溶融して互いに溶け合って接着し合い一体化しているとの主張を認めたのであって、これは自白に該当するから、もし右被控訴人の主張が原審における主張を撤回する趣旨であれば、控訴人は自白の撤回に異議を述べる。

また、被控訴人は、イ号物件の製造工程は検甲第六号証の実験の条件とは異なるから同号証は130部材が再溶融することを立証する証拠にはならない旨主張するが、イ号物件の製造工程において、一七〇~一八〇度に加熱された105部材は、軟化点一〇五度の130部材に塗布されるとともに、表紙体と接着するために相当時間高温を保ったまま表紙体と結合されて接着されるのであり、この間105部材は空冷せず溶融状態のまま130部材と接触しており、しかも表紙体との結合の際に相当加圧されるのであるから、この間に130部材の下端部が再溶融され105部材が130部材に入り込むのは当然のことである。検甲第六号証の実験の程度の条件でも130部材が溶融して接着力を有するに至るのであるから、イ号物件の場合はなおさら強く溶融し接着するというべきである。

被控訴人は、原審において130部材の下端部が左側の台紙と接する部分からえぐれ、右側の台紙に向かってせり上がった形になっている断面図(検乙九、一〇)を提出しており、現実にも130部材は右図面に示される以上に台紙間の左側からえぐれ右側に向かってせり上がり、しかも各台紙の下端部近傍は例外なしに105部材の中に入り込んでいるが(検甲一~四、八~一四)、もともと105部材を塗布する前は130部材の下端部の面は平面であり、台紙の下端部の表面とは直角に接着していたのであるから、130部材の下端部付近が相当程度再溶融したからこそ、右のような形態に変形したことは明らかである。

なお、被控訴人が例として挙げるアイスクリームの天ぷらは、熱が内部にまで伝導していないから内部が溶けないだけのことで、溶融温度条件が満たされれば溶融するのは当然のことである。また、被控訴人は、ある温度で溶融した状態と固体の状態の二つの状態をとりうると主張するが、一定温度で溶融粘度値が二つ存在するということはありえない。

5 接着機能について

原判決は、たとえ組成的には接着剤に属するものであっても、それが接着機能を発揮しない態様で使用されている130部材は「熱溶融性の接着剤」に該当しないと判示するが、130部材は、台紙104と熱溶融性接着剤105部材という二つの物の間にあって二物を結合している(台紙とは130部材だけで接着し、105部材とは105部材の熱で溶け合っている。)から、単独でも接着剤(接着システムは充填接着)として機能しているし、また、前記のとおり塗布された熱溶融性接着剤105部材の一六〇~一八〇度の熱により再溶融して(軟化点一〇五度)105部材との接触面は互いに溶け合って一体化して接着剤の機能を果たしている(接着剤が一体となって存在する以上、製造工程上分かれる熱溶融性接着剤の区分は意味がない。)。

(被控訴人)

1 控訴人は、無線綴じによる台紙帳は本件考案以前には存在せず、まさに台紙帳に無線綴じの手法を採用するための技術を提供したのが本件考案であると主張するが、乙第四号証のものの構成は、まさに控訴人が主張する無線綴じ台紙帳である(ここで無線綴じとは、台紙各々の端縁が背表紙に接着によって結合された構成であり、「普通の無線綴製本においては、各紙葉を重ねて背部を突揃え、圧板間に挟んで背部に接着剤を塗布して背固め及び綴合せを行い、表紙を付ける」〔乙一五〕ことである。)。

控訴人が作成したイ号物件の実測図と乙第一八号証の発明の説明に使用された第8図とを寸法比較しても意味はない。

2 控訴人は、スペーサとしての厚紙や乙第一七号証のような発泡性のインク等は、熱溶融性ではなく、熱溶融性接着剤により接着しようとしても溶融しないので、無縁綴じの製本に使用することはできないと主張するが、本件考案の台紙は熱溶融性ではないのであって、熱溶融性接着剤によって接着する相手方が熱溶融性であると否とを問わず、接着される限り無線綴じの製本に使用できるはずである。

乙第一七号証のものでも、図面の綴じ物5の背表紙側の端面を背表紙に接着すると無線綴じ台紙帳になるし、乙第四号証の半完成アルバムを背表紙に接着したものも、前記意味での無線綴じアルバムであろう。なお、乙第一七号証のスペーサも、熱溶融性接着剤によって背表紙に接着することができる。この接着メカニズムは、本件考案の台紙を背表紙に接着するメカニズムと同じである。通常の接着とは、接着剤と接触する部分が相互に接着される関係にあるものであって、本件考案における台紙相互を接着しかつ台紙と背表紙を接着する接着剤も、この通常の意味での接着剤以外のものではない(接触するが接着しない場合は接着剤とはいわない。)。

3 130部材と105部材についての控訴人の主張は、失当である。

4 被控訴人は、「130部材と105部材とが結合一体化している」ことを認めるにすぎず、接着のメカニズムに関するその他の控訴人の主張を認めるものではない。

105部材が熱溶融性接着剤でありさえすれば、相手方が130部材でなく、乙第一七号証の発泡性インク等のスペーサであっても、厚紙等のスペーサであっても接着するのであり、熱溶融性接着剤による接着の相手側が再溶融することを要しない。

なお、130部材に105部材を塗布したときに130部材が再溶融するか否かは簡単に解明できないものである。130部材が加熱によって溶融して接着性を生じること、熱溶融性接着剤105部材との接着により一体化していることの二つの事実のみから再溶融を推定することは科学的でない。アイスクリームの天ぷらが現実に存在するように、その物が溶融温度条件にあることとその物が溶融状態にあることとは必ずしも一致しないからである。ましてや、溶融状態において接着性の生じる物性であれば、その物が溶融温度になっている事実のみによっては、その物が接着性を生じていると証明できるものではない。

控訴人は、検甲第六号証に基づき、イ号物件の130部材は加熱によって溶融して接着性を有するものであると指摘するが、加熱温度一二〇度を維持し、加圧加熱時間五秒の条件で溶着した検甲第六号証のものとは異なり、イ号物件の製造においては、熱溶融性接着剤は、台紙群の端面に塗布されると空冷されかつ接触部に熱移動するから、短時間で常温に復帰するし、また検甲第六号証の場合のように加熱加圧しないから、同号証は控訴人の主張を立証する証拠にはならない。なお、105部材の塗布時に130部材が溶融温度になったことが確認できたとしても、だからといって130部材が溶融していることが証明できたことにはならない。その物が溶融温度に達していても、溶融した状態と固体のままの状態の二つの状態をとりうるからである。

控訴人は、105部材を塗布接着させる際に130部材の下端部から相当程度の部分が再溶融する結果、130部材の溶融した部分が隣接する台紙と接着するように主張するが、何ら根拠がない。

5 控訴人は、130部材は、台紙104と熱溶融性接着剤105部材という二つの物の間にあって二物を結合している(台紙とは130部材だけで接着し、105部材とは105部材の熱で溶け合っている。)から、単独でも接着剤(接着システムは充填接着)として機能しているとし、イ号物件における130部材が台紙に溶着されていること、この130部材と背表紙とが105部材を用いて接着されていることから、この関係にある130部材をもって充填接着機能を発揮する接着剤であると主張するが、この接着メカニズムは、台紙相互の接着から離れた経路の接着に着眼したものである。このような関係にあるものが接着剤であるならば、乙第一七号証の「綴じ物5」の端面を105部材を用いて背表紙に接着した場合、「発泡性インク等からなるスペーサ」は、台紙と結合されかつ105部材によって背表紙に接着されるから、接着剤であるということになる。しかるに、控訴人は、一方ではこの「発泡性インク等からなるスペーサ」は問題にしないというのであって、大きな矛盾がある。

第四  争点に対する当裁判所の判断

控訴人の本訴請求については、当裁判所も、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属しないから被控訴人によるイ号物件の製造販売行為は本件権利の侵害にはならず、したがってその余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないと判断するものであり、被控訴人の反訴請求のうち、控訴人に対し、被控訴人の取引先に対してイ号物件の製造・販売が控訴人の有する本件権利の侵害になる旨の警告をして被控訴人の信用を毀損し営業を妨害することの差止めを求める請求については、原判決と異なり理由があると判断するものであり、二〇〇万円の損害賠償を求める請求については原判決同様理由がないと判断するものである。その理由は、次の一ないし一三のとおり付加訂正するほか、原判決の事実及び理由欄第四説示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決四三頁七行目冒頭から九行目末尾までを次のとおり改める。

「詳細な説明中にも、本件考案の構成自体(実施例ではなく)について、『この考案の最も大きな特徴は、背表紙内側に台紙群の綴じ付け縁部側端面を接着すると共に各台紙間に必要な間隔をおいた状態で熱溶融性の接着剤により接着してある点にある。すなわち、固化した接着剤が台紙の綴じ付け作用と共に、スペーサとして作用するように構成されている』(公報2欄13~19行目)と記載されており、本件考案においては、固化した接着剤が台紙の綴じ付け作用と共にスペーサとして作用することが示されている。」

二  原判決四五頁二行目冒頭から八行目末尾までを次のとおり改める。

「5と同じ材質。)は台紙群の両端の2枚の台紙4の外側にも十分に付着すると共に、寒冷沙14の目を通して接着剤5に対して融合した状態となる。」(公報5欄2~11行目。なお、公報5欄9行目の『質。)台紙群』は、『質。)は台紙群』の明白な誤記と認められる。)と記載されている。実施例を示す願書添付図面(公報3頁以下)には、隣接する台紙相互を接着している熱溶融性接着剤と台紙を背表紙に接着している熱溶融性接着剤とが同一のものであるか(第一の実施例)、これらの熱溶融性接着剤が同一の材質で不可分一体となっている状態(第二の実施例)が示されている。

控訴人は、右詳細な説明中の「2度目に付着させた溶融接着剤15(接着剤5と同じ材質。)」との記載について、熱溶融性接着剤という趣旨であり、厳密な意味での「同一」種類とまで限定したものではない旨主張するが、単に熱溶融性接着剤という趣旨であるならば、既に「2度目に付着させた溶融接着剤15」と記載しているのである(この「溶融接着剤」が「熱溶融性接着剤」の意であることは明細書の記載から明らかである。)から、ことさら「接着剤5と同じ材質」と重ねて記載する必要はないはずであるし、第二の実施例は、寒冷沙を用いない第一の実施例では、ローラ9によって熱溶融性接着剤5を付着させた台紙4の群を接着する背表紙3上に移動する間に各台紙4間の間隔が狭いために生じる毛細管現象や熱溶融性接着剤の表面張力及び自重などにより、第8図に示されるような、台紙4の群の両端の二枚の外側に熱溶融性接着剤5が付着していない状態になるため、このまま台紙4の群を背表紙に接着すると少しの引き裂き力で剥がれるので、台紙4の群の両端の二枚の外側に予め接着剤を付着させておく必要があることから、この台紙4の群の両端の二枚の外側に接着剤を付着させる別の方法として、熱溶融性接着剤5を付着させた後に寒冷沙14を圧着していったん固化させる方法を採用したものであり、これにより、固化した熱溶融性接着剤5と寒冷沙14とが台紙間空隙の端面側を閉塞した形となっているため、二度目に付着させた熱溶融性接着剤15は台紙4の群の両端の二枚の外側にも十分に付着するというものであって(公報4欄20行目~5欄10行目)、二種類の熱溶融性接着剤を用いるという技術的思想は全く窺えないから、第二の実施例においても、熱溶融性接着剤5と熱溶融性接着剤15とは同一種類のものと解さざるをえない(このように解することは、従来の台紙帳はいずれも「使用材料及び部品数が多く」、製本作業に多くの手間がかかり、大量生産が困難で、生産コストが非常に高くなるという問題があったので、これを解決できる台紙帳を提供するという本件考案の目的〔公報2欄8~13行目〕にもそう所以である。)。また、第二の実施例では、二度目に塗布された接着剤15は台紙間に入り込んでおらず、したがって台紙とは直接接触結合しておらず、接着剤5と結合しているのみであると主張するが、右考案の詳細な説明の記載によれば、二度目に付着させた溶融接着剤15は寒冷沙14の目を通して接着剤5に対して融合した状態となるのであるから、第二実施例においては、右のとおり、隣接する台紙相互を接着している熱溶融性接着剤と台紙を背表紙に接着している熱溶融性接着剤とが同一の材質で不可分一体となっているということができる。」

三  原判決四六頁七行目の次に改行して次のとおり加える。

「 控訴人は、乙第一〇号証のものは、無線綴じの製造装置に関するものであって、多数紙葉を背部の接着剤で固定することに主眼があり、要は接着固定できればよいのであって、本件考案のように紙葉間に一定の間隔を保持する考えは全くないから、事実上接着剤が若干紙葉間に入ることがあっても、それを目的としたものではなく、紙葉間に一定の間隔ができることはむしろマイナスであって、その接着剤の浸入の量を制御することはできていない、右第6図は、紙葉間に接着剤が入っているように見えるが、詳細な説明はなく、その点何がしかの意味があるのかについて明確な考え方も不明である、と主張する。しかし、右乙第一〇号証のものは、確かに意図的に紙葉間に一定の間隔を保持しようとする技術的思想は窺えないものの、第6図には明らかに熱溶融性の接着剤が紙葉間に浸入している状態が示されており(熱溶融性の接着剤が紙葉間に浸入していない状態を描くことに作図上困難があるとは考えられない。)、これが紙葉と背表紙との接着結合を強固にするものであることはいうまでもない。」

四  原判決四六頁一〇行目及び同行ないし一一行目の各「形成貼着」をいずれも「形成」に改め、四七頁一行目の次に改行して次のとおり加える。

「 控訴人は、本件考案は、厚み方向ではなく背表紙の内側面側から各台紙を接着する無線綴じの方法を採用することにより、綴じ金具等を必要とせず、製本作業の手間が大幅に簡略化されるという作用効果を奏する(イ号物件は、130部材に熱溶融性接着剤を使用することによって右の効果を得ている。)のに対し、乙第一七号証のものは、従来の厚紙等によるスペーサを使った平綴じによる製本技術の厚紙部分を合成樹脂等の化合物に置き換えただけの、技術的には従来品と何ら変わりのないものであって、合成樹脂等のスペーサでは加熱しても溶融して接着力を有する状態には至らないので、無線綴じに利用することは不可能であると主張する。確かに、乙第一七号証に示された製本方法自体は平綴じの方法であるが、その合成樹脂等の化合物によるスペーサでは加熱しても溶融して接着力を有する状態に至らないからといって、控訴人主張のように無線綴じに利用することが不可能であるというわけではなく、右スペーサを形成した台紙の背表紙側端面を背表紙に接着することにより無線綴じが可能であることは明らかである。」

五  原判決四八頁二行目の次に改行して次のとおり加える。

「  控訴人は、乙第一八号証のものは「熱溶融性接着剤が緩く集束されたシートと組合される」と記載されていることから明らかなように、紙葉間を集束するものであり、その間に一定の間隔を維持するという考えは全くなく、その第7図、第8図には接着剤によって一定の間隔を維持しているかの如く示されているが、これは作図上やむをえずかかる表現になったもので、むしろ紙葉間に間隙ができることはマイナスであり、詳細な説明にも一定の間隔を維持することに関する考え方は開示されていないと主張する。しかし、シートはあくまで「緩く」集束されるのであって、シートが綴じられる縁の近辺では固く緊縛されないことが望ましい(乙第一八号証三枚目左上欄19行目~右上欄1行目)のであり、このように緩く集束されたシートを左側に傾斜させて各シートの下部左側部分を接着剤層に対して露出させ、次いで逆に右側に傾斜させることにより、各シートの下部右側部分を接着剤層に対して露出させるとともに下部左側部分に接する接着剤を隣接するシートの間に引き込み、その結果、シートの縁(端面)及びすべての側部分が接着剤に接触され、シートが実質的に接着剤層に埋没され個々に固く接着剤によって把持される状態になる(三枚目左上欄4~18行目)のであって、意図的に接着剤をシートの間に浸透させ(引き込み)、シートを実質的に接着剤に埋没させるのであるから、確かに意図的にシート間に一定の間隔を維持するという考え方は明示されていないものの、必然的に浸透させた接着剤の厚みの分だけシートの間隔は維持されるということができる。

ェ 多数の台紙を介在片を介在させることにより少許の間隔tを離して重ね合わせるとともに、その背面に自己接着剤を塗布し、他方背固用紙布にも自己接着剤を塗布して乾燥させた後、自己接着剤同士を接着して背固めをし、右介在片を取り除いた後、隣接する台紙の背固め側縁部にまたがって帯状の連結片を貼着して台紙の対向面同士を連結したアルバム帳(乙四実用新案公報)。」

六  原判決四九頁二行目の「帳票間の間隔」を「帳票間の間隙」に、五二頁一行目末尾ないし二行目の「その材質が実質的に同一で」を「同一の材質のものであって」に各改め、五三頁一行目の次に改行して次のとおり加える。

「(5) 控訴人は、最高裁平成三年三月八日判決・民集四五巻三号一二三頁を援用して、本件のように明細書の実用新案登録請求の範囲の記載でその技術的意義が明らかな場合は、考案の詳細な説明の記載や出願経過等を参酌するのは相当でなく、これらによって技術的範囲を限定解釈することは許されないというべきであるし、仮にこれらを参酌するとしても必要以上に限定的に解釈することはできないというべきであると主張する。しかし、右判例は、その判示自体から明らかなように特許出願にかかる発明の要旨認定について判示したものであって、本件のような、実用新案権(特許権)が付与された後のいわゆる侵害訴訟の場面における実用新案登録にかかる考案(特許発明)の技術的範囲の解釈にそのまま適用があるとはいえず、考案の詳細な説明にはその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その考案の目的、構成及び効果を記載しなければならず、実用新案登録請求の範囲には考案の詳細な説明に記載した考案の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない(昭和六二年法律二七号による改正前の実用新案法五条三項、四項)以上、考案の技術的範囲の解釈に当たって考案の詳細な説明を参酌することが許されるのは当然であるのみならず、本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載でその技術的意義が明らかであるとはいえないし、先行の公知技術を参酌することも、考案の技術的意義を明らかにするために有用であり、許されることはいうまでもない。前記意見書等の記載についても、出願から登録査定に至る経過において出願人が拒絶理由に対して登録を得るべく意見書等において述べた事項と異なることを侵害訴訟において主張することは信義則上許されないという意味において、これを参酌することができるといわなければならない(そして、右(4)に説示した解釈は、控訴人のいうように「必要以上に限定的に解釈」したものでないことはいうまでもない。)。

また、控訴人は、本件考案の主眼は「厚紙の厚さ相当の間隔を持たせる」点にあるのであって、接着剤が台紙間に入り込む深さの点において従来技術に何ものかを付け加えるものでは全くないと主張するが、本件考案は、単純に厚紙の厚さ相当の間隔を持たせること(厚紙の厚さ相当の間隔を隔てて配置された複数枚の台紙)のみを構成要件としているのではなく、その「厚紙の厚さ相当の間隔を持たせる」手段として、熱溶融性接着剤を従来の厚紙等のスペーサの機能を代替する程度に食い込ませて台紙間に介在させるという構成を採用したものであるから、右主張は採用することができない。これに関連して、控訴人は、本件実用新案登録請求の範囲では接着強度の面の限定や接着剤が入り込む深さの点についての限定をしておらず、接着強度を確保するためには種々の方法が選択でき、熱溶融性接着剤が台紙間に「深さ」の点でどの程度入り込む必要があるかについては台紙の性質(材質、腰の強さ、厚み等)との関係で一律に規定することはできず、例えば腰が弱く軽い材質の台紙の場合は熱溶融性接着剤が入り込まなくても十分に結合作用及びスペーサとしての機能を維持することができる(台紙が少々厚くても、その厚さ〔〇・一五mmぐらい〕の三倍程度入り込んでいれば十分なのである。)として、あたかも台紙がその端面のみで背表紙と接着結合していて、台紙間に熱溶融性接着剤が全く入り込んでいない場合も本件考案の技術的範囲に含まれるかのような主張をするが、「上記間隔を保つように各台紙の相互間に介在する」熱溶融性接着剤という実用新案登録請求の範囲の記載に明らかに反するものであって、採用できない。

控訴人は、出願人が第一回及び第二回の拒絶理由通知に対して提出した各意見書(乙八、一二)の記載について、要するに、本件考案は熱溶融性接着剤でもって背表紙への結合作用とともに台紙間に「厚紙の厚さ相当の間隔を保つ作用を持たせた」点が新規な点であることを明らかにするために種々の説明を加えたものであって、引用例に対するコメントもこの観点からなされたものであり、本件考案における接着剤の浸透の程度や深さを問題にしたものではないとか、接着剤の浸透の深さは台紙の接着の強度を左右する問題であって、厚紙の厚さ相当の間隔を持たせるという本件考案の技術とは直接関係がないと主張するが、意見書の前記記載、特に、本件考案は「台紙の綴付側端縁部間には台紙間の必要な間隔が保たれるように接着剤が入り込んでいて、接着剤がスペーサの役割を果たしている」、本件考案の接着剤は「各台紙の相互間に台紙間の間隔を所定の厚紙の厚さ相当の間隔に維持するように入り込んで介在していると共に各台紙の綴じ付け側縁部端面を背表紙部の内側に接着結合している」との記載によれば、本件考案では「厚紙の厚さ相当の間隔を持たせる」手段として、熱溶融性接着剤を従来の厚紙等のスペーサの機能を代替する程度に食い込ませて台紙間に介在させるという構成を採用した旨を明らかにしているのであるから、右主張も採用の限りでない。」

七  原判決五四頁四行目の次に次のとおり加える。

「 控訴人は、無線綴じによる台紙帳は本件考案以前には存在しなかったと主張するが、前記乙第四号証のものは無線綴じによる台紙帳ということができるから、採用することができない。また、控訴人は、乙第一八号証の第8図とイ号物件の105部材の入り込みの程度を計算分析すれば、イ号物件の105部材の方が乙第一八号証の第8図よりもはるかに深く浸透していると主張するが、乙第一八号証の第8図がシートの厚さと接着剤層へのシートの埋没の程度とを数値的に正確に表現したものと認めるに足りる証拠はないから、右のような計算は意味のあるものとはいえない。」

八  原判決五五頁六行目末尾に次のとおり加える。

「 控訴人は、乙第一七号証のものは厚紙等の従来のスペーサそのものの代替技術であるのに対し、イ号物件における130部材は、105部材を塗布する際にその加熱により再溶融し、105部材と溶け合って結合して一体化し、かつ隣接する台紙の下部にも若干接着し、両者一体として介在結合作用を果たしており、そのため無線綴じとしてそのまま製本作業を完了することが可能となるのであって、このような熱溶融性接着剤でなければ果たせない機能を発揮しているのであるから、到底従来の厚紙や接着作用のない合成樹脂製のスペーサと同じ機能の代替とはいえないのであって、スペーサとしての厚紙や乙第一七号証のような発泡性のインク等は、熱溶融性ではなく、熱溶融性接着剤により接着しようとしても溶融しないので、無縁綴じの製本に使用することはできないと主張するが、130部材自体が台紙相互間及び台紙と背表紙を直接接着していると認めるに足りる証拠はないし、スペーサとしての厚紙や乙第一七号証のような発泡性のインク等は、それ自体熱溶融性ではないものの、その背表紙側端面が熱溶融性接着剤によって直接背表紙に接着することにより無線綴じに使用することができるから、右主張も採用することができない。」

九  原判決五五頁九ないし一〇行目の「接着するものの材質が実質的に同一で」を「接着するものとが同一の材質のものであって」に、五六頁一行目ないし二行目の「その材質において実質的に同一のものと認めることはできず(特に、主たる用途を異にする。」を「同一の材質のものでないことは明らかであり(」に各改める。

一〇  原判決五七頁二行目の次に改行して次のとおり加える。

「 控訴人は、130部材は軟化点を一〇五度とする熱溶融性接着剤から成るので、固化した130部材の下端部に一六〇~一八〇度で溶融した105部材を塗布接着させる際に130部材の下端部から相当程度の部分が再溶融することは明らかであり(この点は被控訴人も認めるところである。)、その結果、130部材の溶融した部分が隣接する台紙と接着するし、せり上がった105部材のせり上がり分も当然に隣接する台紙と接着するから、イ号物件は、130部材と105部材とが一体となって台紙相互間を接着していると主張するが、130部材が105部材を塗布した際に再溶融すると認めるに足りる的確な証拠はなく(なお、控訴人は、被控訴人は原審における準備書面(七)において控訴人の「イ号物件のスペーサと背表紙内面の熱溶融性接着剤(105)とが接着によって一体化されている」との主張、すなわち、105部材の熱によってこれと接する130部材の下端部分が溶融して互いに溶け合って接着し合い一体化しているとの主張を認めたのであって、これは自白に該当するから、もし「130部材に105部材を塗布したときに130部材が再溶融するか否かは簡単に解明できない」との被控訴人の主張が原審における主張を撤回する趣旨であれば、控訴人は自白の撤回に異議を述べるというが、右準備書面(七)における被控訴人の主張は、130部材と105部材とが接着によって一体化されていることを認めたにすぎず、130部材が再溶融することまで認めたものとは解されないだけでなく、そもそも、被控訴人が自白したと控訴人のいう「105部材の熱によってこれと接する130部材の下端部分が溶融して互いに溶け合って接着し合い一体化している」との控訴人主張事実は、主要事実ではなく、間接事実にすぎないから、自白は成立しない。また、控訴人が援用する検甲第六号証も、その実験がイ号物件製造工程における条件と同一の条件のもとにおいてなされたと認めるに足りる証拠はない。)、仮に130部材が若干再溶融することがあるとしても、130部材自体が各台紙相互間を接着しているとまで認めるに足りる証拠はない。

控訴人は、130部材は、台紙104と熱溶融性接着剤105部材という二つの物の間にあって二物を結合している(台紙とは130部材だけで接着し、105部材とは105部材の熱で溶け合っている。)から、単独でも接着剤(接着システムは充填接着)として機能していると主張するが、右のような結合関係は接着とはいい難い。また、130部材は前記のとおり塗布された熱溶融性接着剤105部材の一六〇~一八〇度の熱により再溶融して(軟化点一〇五度)105部材との接触面は互いに溶け合って一体化して接着剤の機能を果たしていると主張するが、130部材と105部材とが一体化しているからといって、接着剤の機能を果たしているとはいい難い。

なお、前示のとおり本件考案における「熱溶融性の接着剤」は、各台紙の相互間に介在する熱溶融性接着剤と、背表紙と台紙とを接着する熱溶融性接着剤とが同一の材質であることを要するから、130部材と105部材とを一体として右「熱溶融性の接着剤」に該当すると解することはできないし、また、105部材は従来の厚紙等のスペーサの機能を代替する程度に台紙間に食い込んでいるとは認められないから、105部材単独で右「熱溶融性の接着剤」に該当すると解することもできない。」

一一  原判決五七頁五行目冒頭から五九頁二行目末尾までを削る。

一二  原判決六一頁八行目の次に改行して次のとおり加える。

「 しかして、右各警告文書は、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するとして直接的には日本コダック株式会社及びコニカカラー機材株式会社自身によるイ号物件の販売行為が本件権利を侵害するものである旨を陳述するものであるが、原判決添付の別紙「文書一覧表」の内容及びこれら一連の文書が出された経緯(乙二一の一~三、乙二二~二四の各一・二、乙二五~二八、乙二九の一・二、乙三〇)に照らせば、控訴人は、イ号物件を製造しているのが被控訴人であり、右両社は被控訴人からイ号物件を仕入れたうえで販売していることを前提として、右両社に対してイ号物件は本件考案の技術的範囲に属する旨の陳述をしていることが明らかであるから、それはとりも直さず被控訴人によるイ号物件の製造及び両社への販売行為が本件権利を侵害している旨の陳述をしていることにほかならず、したがって、控訴人は、前示のとおりイ号物件は本件考案の技術的範囲に属しないにもかかわらず、第三者である右両社に対してイ号物件の製造販売が本件権利の侵害になる旨の虚偽の陳述をして、被控訴人の営業上の信用を害しているものといわなければならないから、その差止めを求める被控訴人の請求は理由があるというべきである。」

一三  原判決六一頁九行目の「そこで考えるに、」を「しかしながら、」に改め、六三頁七行目冒頭から六四頁一〇行目末尾までを次のとおり改める。

「理からぬところといわざるをえず、したがって、控訴人による前記警告文書<11>二通及び<13>を発送したことについては故意があったといえないことはもちろん、過失があったともいえないから、右発送行為による損害の賠償を求める被控訴人の請求は理由がないといわなければならない。」

第五  結論

以上によれば、原判決のうち、控訴人の本訴請求及び被控訴人の反訴請求のうちの二〇〇万円の損害賠償を求める請求を棄却した部分は相当であるから、本訴請求に関する控訴人の本件控訴は棄却するべきであり、被控訴人の反訴請求のうち被控訴人の取引先に対してイ号物件の製造・販売が控訴人の有する本件権利の侵害になる旨の警告をして被控訴人の信用を毀損し営業を妨害することの差止めを求める請求は認容すべきものであるが、被控訴人は控訴も付帯控訴もしていないから、不利益変更禁止の原則により、控訴人の本件控訴を棄却するにとどめる。

よって、控訴人の本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 潮久郎 裁判官 山崎杲 裁判官 水野武)

イ号物件目録

図面は、台紙帳の台紙綴じ込み部分の拡大図面である。

この台紙帳の構成は次のとおりである。

表紙部101、102及び背表紙103を有する表紙体と、各々が綴じ付け側縁部間をその厚さ方向に所定の厚紙の厚さ相当の間隔を隔てて配置された複数枚の台紙104と、その台紙104の各々の前記綴じ付け側縁部近傍において前記間隔を保つように、各台紙104相互間に一方の台紙の面の綴じ付け側の端縁から一定の範囲に熱溶融性の接着性を有する部材130が配置されると共に、前記端縁から〇・三ないし〇・六ミリメートル程度入り込んで130部材と接着し、かつ、前記複数枚の台紙104の綴じ付け側縁部の端面を前記背表紙の内側に結合している熱溶融性の接着剤105とからなる台紙帳。

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